この記事では、ファストファッションが自然を壊すメカニズムから、古着屋として僕たちが選んだ行動まで、一つの答えとして書いています。
長いですが、最後まで読んでもらえたら嬉しいです。
SDGsが叫ばれる時代に、Sheinが世界一になった
2015年、国連は「SDGs(持続可能な開発目標)」を採択した。

企業も個人も「サステナブル」「エコ」「環境に配慮した」という言葉を使うようになった。少なくとも言葉の上では、世界は環境を意識する方向に進んできたはずだ。
その同じ時代に、Sheinは世界最大のファッションブランドになった。
Sheinのビジネスモデルはファストファッションをさらに極めた「ウルトラファストファッション」と呼ばれる。AIで需要を予測し、売れ筋だけを少量生産して即座に補充する。新商品は毎日数千点単位で追加され、価格はTシャツ200円台から。
2023年の売上高は365億ドル(約5.4兆円)。同年の全世界ショッピングアプリダウンロード数で1位を獲得した。ZARAもH&Mも超え、ユニクロの売上高(約3兆円)すら上回る規模だ。

人々は「サステナブル」と言いながら、Sheinで服を買い続けた。それが現実だ。
言葉は増えた。ただし、行動は変わらなかった。
では、なぜSheinを含むファストファッションが自然を破壊するのか。
理由は様々だが、今回は木に焦点を当てて書いていく。

まずは木の重要性について
まず本題に入る前に伝えておきたいことが2つある。
1つは地球における木の重要性について。
1本の成木が、人間ひとり分の年間呼吸量を支える酸素を作る。
森は雨水を蓄え、土壌を守り、何千種類もの生き物を養い、地球全体の気温を整える。
森は、目に見えないインフラなのだ。
僕たちが「自然」と呼ぶものの多くは、木が支えている。逆に言えば、木が失われれば、すべてが連鎖的に崩れ始める。
森はすでに失われている
もう1つは、前章で伝えた重要な役割を担う大事な木たちが、今世界から急速に減り続けていることだ。
FAO(国連食糧農業機関)のデータによると、1990年以降の30年間で世界では1億7,800万ヘクタールもの森林が失われた。
それは日本の国土面積の約5倍に相当する。そしてそれは、ここ1分間にサッカーコート27面分の森林が消えている勢いなのだ。
原因は農地への転用、違法伐採、森林火災など。
特に東南アジアのボルネオ島では、パーム油のプランテーション開発によって、もともとの熱帯林の約半分がすでに消滅している。ブラジルのアマゾンでも、農地開発のための伐採が今も続いている。
このまま続けば100年以内に熱帯雨林がなくなるという研究者もいる。
本題である服の話をする前から、木はすでに危機に瀕している。
そしてそこに、服の問題も
ここでようやく本題に入る。
服を作ることがどれだけ自然を壊してしまっているか。
ファッション産業は、世界全体のCO2排出量の約10%を占める(グリーンピース)。これは国際航空便と海運業を合わせた排出量よりも多い。
Tシャツ1枚を作るのに、約2,700リットルの水が使われる。これは平均的な人が3年かけて飲む量だ。
日本に供給される衣類だけでも、製造から廃棄までのライフサイクル全体で年間約9,500万トンのCO2が排出され、水消費量は83億立方メートルにのぼるとされる(環境省データ)。
日本向けの衣類だけでこの数字だ。世界規模でみればそれはもう半端ない数字だ。
CO2が増えれば気温が上がる。気温が上がれば森林火災が増え、干ばつが進み、木が枯れる。さらに木が減れば、ますますCO2を吸収できなくなる。
水も同じだ。服のために消費された膨大な水は、本来であれば自然の生態系を潤すはずだったかもしれない。
しかし、それが過剰に使われ続け、自然が静かに壊れていっているのだ。
服のために、湖がひとつ消えた
ここからは、服を作る上で実際に被害が出た事例について書いていく。
中央アジアにかつて、世界第4位の大きさを誇る湖があった。
1960年代、旧ソ連は綿花生産のために、アラル海に流れ込む2本の大河から大量の水を引いた。綿は、栽培に膨大な水を必要とする作物だ。
その結果、湖は10分の1以下にまで縮小し、干上がった湖底は塩と農薬を含んだ砂漠と化した。風で巻き上げられた有害な粉塵は周辺住民の健康を脅かし、周辺の生態系も壊滅し、9割の漁民が他地域へ移った。
これは「20世紀最大の環境破壊」と呼ばれている。
僕たちが当たり前のように着ている「コットン」服には、こういう歴史がある。
エコな素材が森を壊している
もう1つはシャツなどに使われることが多いレーヨンについてだ。
そもそもなぜレーヨンという生地が登場したのか。
それはかつてシルクが高価すぎて一般市民には手が届かなかった時代まで遡る。
19世紀末、「お金をあまりかけずにシルクに近いものを作れないか」という発想から、木材に含まれる成分を化学処理して繊維にする技術が生まれた。それがレーヨンの起源だ。木は綿より安く大量に手に入り、加工しやすかった。
そのような流れからレーヨンはシルクの代替品として瞬く間に広まっていった。
その後、ポリエステルやナイロンといった石油由来の合成繊維が登場して一時は主役を奪われたが、環境問題が意識されるようになると「石油を使わない、植物由来の素材」としてレーヨン系繊維が再評価された。
特にテンセルは、成長が早く農薬も少なくて済むユーカリを原料とし、製造工程の溶剤も循環再利用できるとして「エコな素材」として広まった。ポリエステルよりはたしかにマシだ。
ただ、原料が木である以上、需要が増えれば木が切られる。
レーヨン、モーダル、テンセル——今も「エコ」の顔をしたこれらの繊維が、熱帯雨林を削り続けている。
環境団体Canopyの報告によると、これらのセルロース系繊維を作るために、毎年7,000万〜1億本の木が伐採されている。さらにその3分の1が、インドネシアの高炭素熱帯雨林など絶滅危惧種の森林から切り出されているとされる。
「エコな素材」のはずが、熱帯雨林を壊しながら作られていた。
リサイクル服も自然を壊している
これまでは服を作る過程の話をしてきたが、ここからは手放した後の話。
リサイクルや寄付に回った服が、どのような問題を生んでいるのかについて書いていく。
日本で、服を手放す際に「可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄」を選ぶ人の割合は62%(環境省調査)。数字に表すと、毎日大型トラック約130台分(約1,300トン)の衣服が国内で焼却・埋め立てされている。
焼却するということは、燃やすということだ。燃やせばもちろんCO2が出る。
ということは作るときにも、捨てるときにも出る。
最近はSDGsやリサイクルショップが番組で取り上げられることも多く、服を含めて様々なものを「捨てるのではなくリサイクルや寄付」する人が増えたように感じる。
それではその寄付やリサイクルされた服はどうなるのか。
良い服はリサイクルショップで販売されたり、古着屋さんに置かれたりする。
ただ、その服たちが向かう先はそれだけではない。
ガーナの首都アクラにあるカンタマント市場には、世界中から毎週1,500万着もの古着が運び込まれる。
しかし、運び込まれる服のうち約4割が、品質が低すぎて誰も買わず、最終的に埋立地へ送られる。グリーンピース・アフリカの調査では、ガーナの貴重な湿地帯にまで衣類廃棄物の山が広がっていることが確認されている。
地域に7年住む漁師は、「川に網を投げると、魚と一緒に服がかかってくる」と語る。
「アフリカに寄付すれば誰かの役に立つ」という善意は、現地ではしばしばゴミの押し付けとして機能している。
↑グリーンピース公式サイトに掲載されている現地の写真は、言葉では伝えきれないものがある
ここまでの話を聞くと、どの選択をしても環境に悪いように感じる。それではどうしたらいいのか。
僕はそもそも服を作りすぎているということが、根本の問題なのではないかと思う。
僕が考える服を買うことの本当の意味
ところで、あなたは服を買うときに何か意識していることはあるだろうか。
一枚の服を買う。それだけのことに見える。でも考えてみてほしい。
あなたが服を買うたびに、企業はその需要を確認する。
売れるから作る。作るからまた売る。
つまり服を一枚買うという行為は、「もう一枚作ってください」「あなたがたを支援しています」という意思表示になっているのではないだろうか。
CO2を出しながら原材料を作り、水を大量に使い、染色工程でエネルギーを消費し、世界中を輸送して届けられる服。
その生産サイクルを回し続けているのは、買い続けている僕たち自身なのではないだろうか。
服を買うことは、その企業を支援して、そのサイクルの中に入ることだと、僕は思っている。
限りある資源の中で、何を選んでどこを支援するのか。
それはお金も同じで、誰もが無限にお金を持っているわけではない。限りある予算の中で、どの企業を・どの商品を選ぶのか。
地球の資源もあなたの財布も、どちらも有限で、だからこそ何を選ぶかが大事になってくると僕は思っている。
大企業が「新しい服を買うな」と言えない理由
近年、多くのアパレルブランドがSDGsを掲げ、リサイクル素材の採用を進めている。
ユニクロはペットボトルから作ったリサイクルポリエステルを採用し、回収した自社製品をリサイクルする「RE.UNIQLO」を展開。
H&MのCONSCIOUSラインも環境配慮素材を採用している。これら自体は意味のある取り組みだ。
しかし、どのブランドも絶対に言わないことがある。
「新しい服を買うのをやめてください」
当然だ。新品を売ることが彼らのビジネスモデルの根幹にある。
「環境に配慮した新品をつくる」までは行ける。「つくること自体をやめる」という選択肢は、構造上取りえない。
正直僕も新しい服を作るのをゼロにする世の中は絶対に来ないと思うし、そこまでする必要はないと思う。
ただ、もう少し違う方法があるんじゃないかと、より地球に優しいやり方があるんじゃないかとは思う。
アウトドアブランドの静かな抵抗
ファッション産業全体が「つくる」ことをやめられない中、アウトドアブランドの一部は、それぞれの形で別の方向から動き始めている。
①修理して、長く使う
ザ・ノース・フェイスは、富山の自社リペアセンターで20〜30年前から修理サービスを続けている。キッズ製品の修理代は無料だ。
パタゴニアは、2011年のブラックフライデーにニューヨーク・タイムズ全面広告で自社のジャケットを指して「Don’t Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」と訴えた。
広告費を払って「買うな」と言ったアパレルブランドは、後にも先にも彼らだけ。
2013年に始まった「Worn Wear」プログラムは修理・再販・リサイクルを事業として実装したもの。
パタゴニア製品であれば直営店に持ち込むか郵送するだけで専門スタッフが修理してくれる。修理した製品や回収した中古品は一部の直営店で再販もしている。日本だけで年間2万件以上の修理を実施している。
②利益で、自然を直接守る
オービスは1856年創業のフライフィッシングブランドで、1960年代から税引前利益の5%を自然保護団体に寄付し続けている。累計寄付額は2,500万ドルを超える。
創業家のパーク・パーキンスはこう言っている。
「自然資源の恩恵を受けるなら、それを守るために行動しなければならない」

カベラスは、Bass Pro Shopsとの合流後に設立した「Outdoor Fund」を通じて、年間2,000以上の自然保護プロジェクトを支援。過去5年間の寄付総額は1億ドルを超える。
その創業の哲学はこうだ。
「自然の恵みを享受する者は、それを守る責任がある」

③丁寧なものづくりで、素材を大切に
L.L.Beanの創業者は「自分が扱うすべての商品をフィールドで実際に試した」と語った。

エディーバウアーは「命がかかっているときに品質の妥協はできない」という言葉を残した。

ランズエンドは流行を追わず、セーリングの現場から生まれた機能服を誠実に作り続けた。

コロンビアの創業者は「アウトドアは一部のエリートだけのものであるべきではない」と言い、良い素材を誰もが手にできる価格で届けることを生涯の仕事にした。

これらのブランドに共通しているのは、アウトドアを愛しているからこそ、作るものに誠実でいられるということだ。
品質が高いからこそ長く使い続けられ、結果として環境にも良いことに繋がっている。
先ほども書いたが、どのブランドも新品を作り続けている以上、「つくること自体をやめる」選択には踏み込めていない。
そこで次からは古着屋の僕たちだからこそ出来ることと少しの野望を書いていく。
古着という選択肢
まず大前提として「古着を買えば環境問題が解決する」と言いたいわけではない。
古着市場がどれだけ大きくなっても、新品がゼロになる世界は現実的ではないし、それが正解ではないと思う。
新しい服は作られ続ける。ただ問題は、その量と作り方だ。
適正な量を、より環境に優しい方法で。
僕らはこうなったら良いんじゃないかと考える。
まずは古着を選ぶ人が増え、市場が大きくなっていく。すると、新品を作る量が自然と減っていく。
そしてそこで、新品を売るブランドが修理やリペア事業を展開していく。もしくは、新品を作る会社ではない修理・リペア専門の会社に需要が高まる。
ファッション業界全体で「たくさん作って売る」より「少なく作って長く使ってもらう、修理・リペアを前提とした」モデルが増えていく。
服を買うことへの意識が変わり、「この一枚にどんな意味があるか」を考える人が増えていく。
それは革命ではなく、積み重ねだ。
そんななかでも僕らが手にすることの多いアウトドアブランドの古着は、もともとの素材の品質が高く、10年・20年と使い続けられるものが多い。新品と変わらない、あるいはそれ以上の価値を持つものもある。
それを選ぶことは、限りある資源を大事にすることに繋がると思う。
服を選ぶとき、古着という選択肢がある。それは「我慢」でも「妥協」でもないと、本気で僕はそう思う。
じゃあ、僕たちにできることは
この記事を書きながら、何度も思い出した言葉がある。
フライフィッシングブランド「オービス」の創業家、パーク・パーキンスはこう言っている。
「自然資源の恩恵を受けるなら、それを守るために行動しなければならない」
アウトドア総合ブランド「カベラス」の創業の哲学はこうだ。
「自然の恵みを享受する者は、それを守る責任がある」
さらに、パタゴニアの創業者が2022年に全株式を環境NPOに譲渡し、「地球が私たちの唯一の株主だ」と宣言したことを思い出した。パタゴニアの製品を買うたびに、その利益が自動的に自然保護へ向かう構造になっている。
つまり、会社の全利益が人間の株主ではなく、環境保護活動に直接流れる仕組みを、法的に取り消せない形で作ったのだ。
これは単なる言葉ではなく、これ以上ないほど明確で大きな意思表示だと僕は感じた。
そして僕たちはそんな素敵な考えを持つアウトドアブランドの古着を売っている。
アウトドアという文化は、自然があってこそ成り立つ。山があり、川があり、森があるから、アウトドアは存在する。それを理解した上でアウトドアブランドが取り組んできた”自然を守る姿勢と行動”に心から感銘を受けた。
そういうブランドを扱っている僕たちに、何かできることはないかと考え、行動することにした。
まずは先ほど伝えたように、1人でも多くの人に古着の良さを知ってもらう。そして今回の記事などを通して現状を知ってもらう。
ただ、それだけではすでに失われた森は戻ってこない。
・服を作る → CO2が出る → 木が枯れる。
・服を捨てる → 燃やしてCO2が出る・ゴミが自然を埋める。
結果として、地球にとって不可欠な木が減っていく。
だとすれば、「古着を広める」ことと、「今あるものを守り、失われた自然を取り戻す」ことを同時に行っていけたらベストなんじゃないかと思った。
埼玉の木を守って増やす
僕たちは埼玉に住んでいる。だから、まずは埼玉の自然を守ることを選んだ。
「さいたま緑のトラスト運動」 は、開発の波にさらされてきた埼玉の自然を、土地ごと守る活動だ。寄付が集まるほど、その土地は開発されることなく自然のまま残り続ける。
「彩の国みどりの基金」 は、今ある森林を守りながら、みどりの少ない都市部に木を植えて失われた緑を取り戻す活動だ。「都市への植樹」を指定すれば、その寄付が実際に埼玉の街の木になる。
STOCK HILLでは、売上の1%をこの2つの団体への寄付に充てることにした。
参考にしたのはパタゴニアだ。彼らは1985年から売上の1%を環境保護団体に寄付し続け、2022年にはさらに全株式を環境NPOに譲渡し、全利益が環境保護に向かう仕組みを作った。
僕たちはその1%という最初の一歩から始めることにした。売上が増えれば、寄付できる金額も増える。だから、店を大きくすることが自然を守ることに直結する。
あまり大きなことは言えないが、古着を広めることで新しい服を過剰に作らせない。そしてその売上で木を守り、植える。
僕たちが今できることは、これだと思っています。
長い文章を最後まで読んでくださってありがとうございます。
この記事を見て、何かを感じてくれる人が1人でも増えますように。
参考:FAO「世界森林資源評価2020」、WWFジャパン、環境省「サステナブルファッション」、国際環境NGOグリーンピース、Canopy、NBC News、Business Insider Japan、Greenpeace Africa、WIRED、パタゴニア公式サイト、ゴールドウイン(ザ・ノース・フェイス)、オービス公式サイト、カベラ・ファミリー財団公式サイト、L.L.Bean・エディーバウアー・コロンビア各公式サイト


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