EBTEK(イービーテック)をご存じでしょうか。
1996年に生まれ、わずか数年で消えていったエディーバウアーの本気のテクニカルライン。
普通のエディーバウアーとは何かが違う。配色が妙にかっこいい。生地がしっかりしている。よく見るとGore-TexやPolartecのタグまで付いている。
そんなEBTEKをStockHillでは取り扱っています。
理由は僕たちが好きだから。
ここではその魅力をお伝えします。
エディーバウアーというブランドそのものの歴史——凍死しかけた創業者がダウンジャケットを発明した話は、こちらの記事をどうぞ。
1996年、EBTEKが生まれた
90年代、アウトドアウェアの世界は技術競争の真っ只中にあった。
パタゴニアやノースフェイスがハイテク素材で市場を塗り替えていく中、1996年、エディーバウアーはひとつの答えを出す。
それがEBTEKだった。
一言でいうと「エディーバウアーの技術全部盛り」
名前の由来はシンプルで、Eddie Bauerの「EB」に、テクノロジーの「TEK」。
文字通り、エディーバウアーの技術を集めたラインだ!
防水はGore-Tex、フリースはPolartec、そして自社が誇るプレミアムグースダウン。当時のアウトドア業界で最高とされた素材を惜しみなく使った。
展開の幅も広かった。アウター、スキーウェア、バッグ、サイクリング、トレーニングウェアまで。
単なるジャケットのシリーズではなく、アクティブに動く人の生活全体をカバーするラインだった。
そんなEBTEKを説明する面白い記録が残っている。
1997年、実際にEBTEKのGore-Texジャケットを買ったユーザーがネットに書き込んだレビューだ。
「セールで140ドルまで下がっている。エベレストには登らないけど本物のスキーウェアが欲しい、という人に完璧なジャケットだ」
エベレストには登らないけど、本物が欲しい。
この一言が、EBTEKをうまく表しているのではないだろうか。
命がけの登山家のためではなく、普通の人の日常に本物の技術を持ち込む。それがEBTEKだった。
そして、数年で消えた
EBTEKは2000年代初頭に展開を終える。
わずか数年。理由を一言で説明する公式記録は残っていないが、その後のエディーバウアーがカジュアル路線へ舵を切っていったことを考えると、時代の流れの中で静かに役目を終えたラインだったのではないだろうか。
EBTEKが早々に終わってしまったのは悲しいが、逆にこれが、古着好きにはたまらないポイントにもなる。
数年しか作られていないということは、市場に存在する数が決まっているということだ。
もう二度と増えない。しかもGore-TexやPolartecを使った作りの良い個体が、当時の価格からは考えられない値段で古着市場に眠っているのだ!
ちなみに今は復刻が出ています!!

カニエが着て、世界が思い出した
長く忘れられていたEBTEKに、転機が訪れる。
2019年頃、カニエ・ウェストが90年代のヴィンテージEBTEKフリースを何度も着ている姿がキャッチされた。
実はカニエ・ウェストとエディー・バウアーには、ちょっとした因縁がある。
2016年の曲「30 Hours」で、彼はまだ売れる前の時代をこう振り返っている。「乗っていた(フォードの)エクスペディションはエディー・バウアー・エディションだった。12月なのに冬用タイヤも履かずに走ってた」と。
ここで歌われるエディー・バウアー・エディションは、当時のアメリカで「ちょっといい暮らし」の象徴だった車だ。冬用タイヤも買えなかった若者が、それでもエディー・バウアー仕様のSUVに乗っていた——その背伸びとリアルさが、この一行に詰まっている。
つまり90年代のアメリカで育った世代にとって、エディー・バウアーは服のブランドである以上に、青春の風景そのものなのだ。だからこそ、大スターになったカニエがふと思い出として歌詞に忍ばせた。
そもそもエディー・バウアーとフォードはどういう関係性なのか。
それは1983年までさかのぼる。
この年、アウトドア服のエディー・バウアーと自動車メーカーのフォードが提携し、翌1984年モデルから「エディー・バウアー・エディション」の車が登場した。第一号は小型SUVのフォード・ブロンコII。フォード車で初めて、服のブランド名を冠した上級グレードだった。
狙いは、車に「アウトドアの世界観」をまとわせることだった。1980年代はアウトドア・アドベンチャー文化が盛り上がっていた時代。タンとブラウンのツートン塗装、フェンダーのエディー・バウアーのバッジ、ステッチ入りの上質な内装——ただのSUVを「自然が似合うライフスタイルの車」に変えたのだ。今でいうブランドコラボの、かなり早い例と言っていい。
この提携は大成功し、17年以上続いた。ブロンコII、ブロンコ、F-シリーズ、そしてエクスペディションやエクスプローラーへと広がり、エディー・バウアー・エディションはフォードの「アウトドア志向の最上級グレード」の代名詞になった。カニエが歌ったエクスペディションも、その一台だったわけだ。
エディー・バウアーを知ると、服のタグだけでなく、街で見かける古いフォードのバッジにも同じブランドの歴史が刻まれていることに気づく。
最後に
EBTEKの何に僕らは魅了されるのか。
凍死しかけた男が始めた会社の90年代の本気。数年しか存在しなかったからこそ、一着一着が一期一会であること。そして30年前の服が、今も普通に着られる品質で残っていること。
新品の復刻も素晴らしい。でも、当時のアメリカで作られ、誰かに着られ、海を渡ってきた一着には、復刻では出せないものが宿っていると思う。
Stock Hillでもエディーバウアーのヴィンテージは定番的に扱っている。EBTEKのタグを見つけたら、ぜひ手に取ってみてほしい。
それは、あるブランドが一番熱かった時代のかけらだ。
参考:Eddie Bauer公式ブランドヒストリー(Highsnobiety掲載)、WWD、Trailspace(1997年当時のユーザーレビュー)

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